雇用契約のない県内の就労支援施設で、障がいのある人たちに支払われている「工賃」の平均額は、秋田県の最低賃金の約4分の1、時給224円です。
1か月間で支払われる額は、平均1万6,000円ほどです。
商品の袋詰めや部品の組み立てなど、単純な作業が中心で、あくまでも一般企業などで働くための「訓練」とみなされるため、最低賃金は適用されず、低い水準にとどまっています。
こうした中、全国的にも高い水準の工賃を目指す就労支援施設が、今月1日、横手市に完成しました。
循環型の農業と付加価値の高い商品づくりで、福祉分野の課題解決も目指します。
田んぼの中に建ち並ぶ、農業用のハウス。
育てられているのは、細かく砕いた木を固めた“菌床”を使ったシイタケです。
生産量は、年間約180トン。
スタッフが手作業で収穫を行っています。
先月末、横手市や大仙市の就労支援施設に通う3人が見学に訪れていました。
スタッフ説明
「収穫の作業だとかトレーの中に水が入ってますけども、この水が少なくなってきたら水を足してあげたり」
「新しい菌床をここに持ってきて、それから手入れをする作業が結構たくさんあるので、それを皆さんで交代交代でやっていただくことになります」
続いて3人がやってきたのは、同じ敷地にある就労支援施設、リウォークスです。
ハウスで収穫されたシイタケを選別したり、袋に詰めたりする作業を体験しました。
「これだったらちょっと切ってもバランス悪くないから、傘の大きさを見ながら軸のバランスを見て」
形や大きさがバラバラのシイタケ。
軸の部分は刺激に弱く、触れると黒ずんでしまうため、1本1本、丁寧に扱わなければいけません。
機械化することが難しく、人の目と手が欠かせない作業です。
リウォークスの工賃は、時給300円。
利用者の能力などに応じて加算されることになっていて、最も高い評価を得た場合、時給は900円を上回ります。
県内の平均工賃の4倍以上です。
リウォークスを立ち上げたのが、シイタケの生産会社で代表を務める、畠山琢磨さんです。
使い終わった菌床を再利用して、昆虫を飼育・繁殖する事業も手掛けています。
リウォークスでは、利用者が選択すれば、容器から羽化した成虫を取り出す作業にも加われます。
「角が短い」
「短いのはメスなんですね」
「急に引っ張ってしまうとケガしちゃうので、自分も虫もお尻をさすってあげると前に移動していきます。そうすると、自然に離れてくれるので」
オーストラリアなどに生息する、ニジイロクワガタ。
“世界一美しいクワガタ”とも言われ、高いものは1匹1万円以上で取引されることもあります。
まるで宝探しのような作業。
クワガタに傷をつけないよう、慎重に土を掘り進めます。
「お~オスだ!リウォークス第1号」
「クワガタといっても攻撃力はゼロ」
「痛くない」
和やかな雰囲気の中、付加価値の高い商品を生み出します。
「エサも僕ら作れるので、そこが強みですよね。原価で作って、あとはいかに大きくして高く売るか」
「こういうのが生まれたらオークションとかでペアで販売するとか、ここでやっていければ」
これまで通っていた施設では、単調な作業をこなすことがほとんどだったという3人。
「ニジイロクワガタが今後ブルーとかオレンジとかが出てくるのかなって期待があって、ワクワクしながらやらせていただいています」
「やっぱり大変なこともあるんですけど、その分やりがいもあって楽しいかなって思います」
サボテンなど、多肉植物の栽培にも携わることができる、リウォークス。
昆虫を飼育する過程で出るフンを肥料にしています。
500種類以上を育てていて、中には1株数十万円の珍しいも植物も。
「シイタケ、昆虫、多肉植物、どれも機械化できないけれども、付加価値はやりようによってはすごく伸びしろがあるようなものなので、多様性のある環境づくりとそれをこなしながらも高工賃の実現。秋田県1位、ひいては全国でもトップクラスで障害福祉の業界を引っ張っていけるような事業を作っていきたいと思います」
シイタケ栽培を軸にした様々な事業。
リウォークスでは、作業の選択肢を広げるとともに、付加価値の高い商品づくりに携わってもらうことで、利用者のやりがいにもつなげたい考えです。
【特集】目指すは全国トップクラスの工賃!多様な事業でやりがい作りも 就労支援施設の挑戦(2024年8月22日掲載)|ABS NEWS NNN (ntv.co.jp)